循環器領域質問

【質問内容】
新型コロナ疑いもしくは、新型コロナに感染している患者に対し緊急心外を行う場合、どのような感染対策をしたら良いのでしょうか?
当院でも色々と考えているのですが、看護師や臨床工学技士の手術室への入退室や検体の提出等どうしたら良いのか迷っています。何か良い知恵があれば教えてください。

【回答1】
ご相談のメールについてですが、基本的には日本外科学会など12学会が提言している内容に準拠した対策を講じることとしています。
人工心肺については
①人工心肺担当CEは2名、不潔領域(各手術室の外)担当者1名にて対応し、人工心肺担当者の出入りは極力最小限に留めること
②可能であれば2チーム制にし、精神的苦痛による疲労などを考慮し、交代制とするように立案しています。(1時間ごと)
③血液中のウィルスの存在は数%認められており、取り扱いに十分注意する。当院では中央のABLにて検査を行っているが
POCも考慮したポータブルタイプの測定器を使用することが望ましい。
④検体提出方法は様々なガイドラインに記載されていますので、参考にしていただければと思います。
⑤手術終了後からICUまでの管理についてもICUスタッフと協議し、人工呼吸器の機種選定なども指導しております。

【回答2】
①COVID確診もしくは疑いの有無
②COVID陽性(疑い含む)の場合、緊急手術の必要性評価
<緊急手術が必要な病態>
・急性大動脈解離(A型)
・大動脈瘤破裂
・感染性心内膜炎
・急性動脈閉塞症 など
③必要がない場合
COVID病棟へ搬送。その後保存的治療

必要な場合
手術部へ搬送
・当院には11室手術室があるが、うち1室は陰圧室であるため、コロナ患者の場合はそちらの部屋を使用する。
(ただし部屋は狭く、6m×6mくらい)
・挿管時は防御用のテントを患者頭上に設置して行う。
その際は、他の関係者は室外で待機。
・挿管後、関係者が入室。(防御服等の装着は必須)
入室者は職種・人数を制限し、一旦入室した場合は原則手術終了まで退室できない。
・血液検体については、コロナ病棟で施行した場合と同様に対応する。
検体の引き渡しについては、レッドゾーン(感染側)からブルーゾーン(非感染側)に感染防御手法で渡す。実際に検査をする検査科での対応については不明。
・使用した医療機器については清拭にて消毒。
当院ではルビスタを使用。

非常に簡単ではありますが、上記のように対応しています。
当院では日本外科学会の「新型コロナウィルス陽性および疑い患者に対する外科手術に関する提言」を中心に、各課ガイドラインに基づいて対応することになっております。
また当院COVID対応マニュアルに則って対応を行い、不明な点については当院ICTに随時確認をしながら対応していきます。
今回ご質問いただいた施設にどのくらいの対応マニュアルが存在するのか(ゼロからなのか、ある程度整備されているのか)によっても対応は異なるかと思います。
麻酔科ならびに心臓外科、循環器内科、手術部等の関連部署との連携は不可欠かと思います。

既に各職種とのカンファレンスも終了されているかもしれませんが、再確認をしていただくのも重要かなと感じました。

【回答3】
私の施設では、COVID陽性患者の開心術を経験しておりませんが、現段階のマニュアルとしましてお答えさせていただきます。また以下の対応は、流動的であり様々な背景を鑑みて、適宜見直すべきであることを申し添えいたします。

A:開心術を行う際、定期手術・緊急手術ともにPCR検査を実施することとしております。
(不測の事態が発生した場合、適切なPPEと作業の流れが変わってきます)
A:COVID陽性患者の場合、全てのスタッフが、PPE装着(N95マスク、フェイスシールド、ゴーグル、ガウン、二重手袋)にて対応します。
・入室から気管挿管まで最小限の人員にて準備を行い、挿管まで対応したCEスタッフは挿管後にPPEを外し部屋から退出します。休憩。(慣れない環境およびPPE装着によるストレス軽減を目的)
・患者挿管後に、別の部屋で人工心肺装置等の準備を行っていたCEスタッフが、PPE装着し人工心肺装置および周辺の必要物品を手術室に運び入れます。(COVID陽性患者と接触する可能性のあるスタッフを極力減らすため)
A:基本的に術中、スタッフは部屋から入退出しないようにしています。部屋の外に1名配置し、メッセンジャー業務、輸血や検体、滅菌物のトランスポーター業務を行うようにしています。
A:手術室内で清潔ゾーンと非清潔ゾーンのゾーニングを行い、そこでPPEの取り外し等を行います。
A:患者退出後、環境除菌用ウエットクロスにて室内、および周辺機器・物品の拭きあげを行います。

参考文献
・日本手術看護学会
手術室での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策ガイドライン 第2版
・日本外科教育研究会
新型コロナウイルス感染症とサージカルスモーク(ver1.2 released 4/22/2020)
・新型コロナウイルス陽性および疑い患者に対する外科手術に関する提言(改訂版)